神戸市立博物館開館40周年記念特別展「よみがえる川崎美術館‐川崎正蔵が守り伝えた美への招待ー」が今秋10月15日(土)~12月4日(土)に神戸市立博物館で開催されるにあたり、記者発表会が行われた。
川崎美術館は、明治23年(1890)9月6日、神戸市布引の川崎邸(現在のJR新神戸駅周辺)に開館した日本初の私立美術館。創設者は川崎正蔵(1837~1912)は、川崎造船所(現川崎重工業株式会社)や神戸新聞社などを創業した、近代日本の実業家。明治時代、古美術品が、西洋文化に流入、廃仏毀釈で海外へ流出するのを憂いだ川崎正蔵は、日本・東洋美術の優品を多く収集し、それらのコレクションを個人で秘蔵せずに美術館の創設をする。そして大正13年(1924)までに、計14回の展観を行なった。その後、昭和2年(1927)の昭和恐慌によってコレクションは散逸し、川崎美術館の建物も、水害や戦災によって失われてしまうが、日本国内外で大切に守り伝えられ、今回、神戸市立美術館の開館40周年の節目に、100年ぶりに神戸で再会する。
今回公開されるのは、国宝2件、重要文化財5件、重要美術品4件を含む、絵画や仏像、工芸品約80件の旧蔵品、105点の作品がここに集う。現在、川崎美術館の内部を伝えるものは残っていないが、写真に残る外観や、現存する「陳列品目録」(展示作品リスト)などを手掛かりに、当時の展観の一端を再現し、日本で神戸市立博物館のみで公開される貴重な機会となっている。
なかでも、応挙の襖絵を再現展示されているのをはじめ、足利将軍家の東山御物を代表する国宝 伝銭舜挙「宮女図」(個人蔵)、川崎正蔵が常に手元に置いて愛した、織田信長伝来と伝える重要文化財 伝顔輝「寒山拾得図」(東京国立博物館蔵)などの珠玉の作品が再会し、ここに展覧の機会を迎える貴重な展覧会となっている。
長春閣鑑賞(第1集表紙、第4集:第五 桓野王図、第6集:川崎美術館概観) 川崎芳太郎編 國華社 大正3年(1914) 川崎重工業株式会社蔵
川崎正蔵の遺言により國華社から刊行された豪華図録。全6冊に厳選された386図を掲載。精緻なコロタイプの図版、装幀など贅を尽くし、古美術研究のために友人知人に贈呈された。川崎正蔵が一代で築いたコレクションの精華。