南京街

中華料理店や食材店、雑貨店など、約100店舗以上が軒を連ねる「南京町」。

神戸港が開港されたとき、山側の北野の異人館通りから近く、海側に隣接するこの場所に、中国人たちが移り住み、人々のくらしを支えるマーケットを創った・・・それが南京町の始まりです。

その後、戦争や震災をも乗り越えて、二代目、三代目となったオーナーたちが暖簾と伝統を受け継いでいっています。

お目当ての店があるから。

春節祭の獅子舞が見たいから・・・。

中華料理が食べたいから・・・。

元町駅の南側、東西約270m、南北110mの中に、中華料理店やテイクアウト屋台がひしめきます。

端から端まで歩いてもすぐなので、路地裏もチェックしながら好みの中華を自分のスタイルにあった食べ方をしたいところです。

南京町の魅力は、手軽にテイクアフトフードでさまざまな中華料理を楽しめること。

老舗の豚饅や、点心料理、スイーツといったチャイニーズグルメを楽しみましょう。

【中華料理】

中華料理と一口で言っても、広大で歴史のある中国にはさまざまな地方料理があります。

日本人にもわかりやすく東西南北で分けると、北の「北京料理」、東の「上海料理」、南の「広東料理」、西の「四川料理」といった『四大中国料理』は馴染みがあるのでは?!

特に南京町では広東料理が多いのですが、各地の中華を食することもできます。


「中国料理」バラエティーの秘密

小さな島国である日本にも、気候風土に合わせた郷土料理が存在していますが、広大な敷地と長い歴史をもつ中国には、さらに奥深い料理の系譜が存在します。

専門家の間では八大料理系統に分けられることもあるようですが、日本では、東西南北にある大都市をとって、北京(北)・上海(東)・広東(南)・四(西)に分類する「四大中国料理」のほうがお馴染みかも。

特に南京町に多いのが広東料理の店です。「食 は広東に在り」と言われるほど、食材が豊富な地域。神戸と同じく海に近いため、シーフードの風味を生かす、あっさりとした味付けが特徴です。また、香港か ら入るフルーツを使ってマンゴープリンをつくったり、インドネシアからつばめの巣を仕入れて珍味として楽しむなど、デザートからゲテモノまで幅広く楽しむ 広東の人たちは、中国グルメの代表と言えそうです。

首都・北京やハルピン空港のある北部では、寒 い気候でも元気に過ごせるよう、塩気が強く、油を多く使った揚げ物や炒め物などが好まれます。ネギやニンニク、ショウガなどの薬味を醤(ジャン)や油に加 えて味に変化をつけるのも特徴のひとつ。水餃子やとろみのあるスープも北京料理の代表格です。ただし、昔は入手困難な高級食材だったという歴史から、砂糖 を使うことは少なく、酢豚も甘さ控えめ!その反面、宮廷料理や「満漢全席」などの流れが別にあり、北京ダッグなどの高級料理が残っています。

長江下流に位置し、湖沼の多い上海地方では、 エビ、カニなどを使った料理が味わえます。また、水質が良く稲作が盛んなため、紹興酒の名産地でもあります。また、スープを包み込んだ粉もの饅頭「小籠 包」の得意。豆腐や春雨を使った煮込み料理も多く、コクのある味付けが特徴です。

麻婆豆腐に代表される辛い料理は、湿気が多い盆地気候の四川地方では好まれました。豚肉や鶏肉のほか、うさぎや羊も好んで使い、煮込みか油をたっぷり使った調理が主流です。ザーサイの漬物や唐辛子など保存性の高い食材を付け合せやタレを使います。

このような地域ごとの食文化の違いは、春節の 料理にも表れています。八宝菜のルーツと言われる8つの食材(タケノコ、落花生、春雨、金針菜、髪菜、白菜、白果、干し牡蠣)を使った「斉」を並べる広東 料理、コインや飴を入れた水餃子「発財」で一年の金運を占う北京料理、細く長い長寿を祈って温かい麺料理を食べる上海料理、鍋を囲んで家族円満を願う四川 料理ーそんな、中国料理に込められた意味を知れば、南京町グルメも何倍も楽しくなるでしょう。


春節祭

旧暦で節句を祝う中国では、旧正月にあたる「春節」が一年中で最高に盛り上がるおめでたい日。南京町では、1987年から、春節のお祝いをアレンジした「春節祭」を開催するようになりました。1997年には神戸市の地域無形民俗文化財に指定され、地元の方々だけでなく、観光客からも愛される祭りとして根付いている。

 

広大な国土の中国。正月を祝う作法や習慣は、地域ごとに少しずつ異なる。家の玄関に提灯(ランタン)や五色の布を飾ったり、「春聯(チュンリュン)」と呼ばれるおめでたい対句を書いた赤い紙や、”福”の字を逆に書いて、神様の到来を願う「倒福(タオフー)」を貼ったりする様子は共通です。「紅包(ホンパオ)」・圧歳銭(ヤースイチェン)という小さな赤い袋に入れたお金を子供たちにプレゼントするなど、日本の正月と似た風j系もみれれます。

お正月前日の大晦日の夜から爆竹を鳴らし、花火を打ち上げて賑やかに盛り上がるのが春節の慣わし。地域ごとに異なるが、広東エリアでは、大根餅や春雨の煮物、ドライフルーツといったお正月料理を食べながら、一睡もせずに夜を明かすといわれています。

もともとは、灯りや音で脅しをかけ、おそろしい怪物を追い払うために始められた習慣という説が有力だが、風水などのお金にまつわる縁起担ぎが大好きなお国柄ゆえか、いつしか爆竹や花火の数や音の大きさは、その家庭の経済的な豊かさを示す「ステイタス」とまなされるようになりました。だからこそ、競い合うように大きな音を鳴らし合い、踏み付けられた爆竹の残骸の多さすら、自慢のタネになるのです。

そんな春節の華やかさや賑わいを受け継いだ「春節祭」でも、「獅子舞」や「龍舞」のほか、さまざまな出し物を南京町商店街振興組合では企画し、何ヶ月も前から準備を始めています。

1987年(昭和57年)の第1回春節祭の目玉として企画されたのが「龍舞」。

指導者や教科書が存在するわけではなかったため、長崎の「おくんち」に出てくる「蛇踊り(龍踊りともいう)」を実際に見学したり、写真を見たりして研究するしかありませんでした。しかも、中国から部品が届くのが遅れ、ほうきやモップをひもでつなぎ、龍にみたてて猛練習。そんな苦労が実ったのか、初めての春節祭は4日間で予想をはるかに超える27万人もの来場を集め成功裏に終わりました。

昭和天皇が崩御された1989年と阪神淡路大震災のあった1995年は中止を余儀なくされましたが、1995年3月は「復活宣言」と銘打ち、市民の沈んだ心に勇気と元気を与えました。

今では、「中国人史人游行」「中国舞踏」「中国音楽」「太極拳・花架拳」などバラエティー豊かなイベントが目白押しで、神戸の冬の風物詩として定着している。


中秋節

旧暦の8月15日に合わせて、一年で一番美しい満月を一家団欒の象徴として祝う「中秋節」。日本の十五夜のルーツと言われています。

農耕民族であった古代中国の人たちにとって、秋は収穫の時期。そのちょうど真ん中のあたる旧暦の8月15日は「中秋」と呼ばれ、春節に次ぐ伝統の祝日とされています。秋雨によって空気中の埃が払われ、澄んだ夜空にぽっかりと浮かぶ美しい月を鑑賞する習慣は、唐の時代から続いているらしく、詩文などにも残されています。

地の神様に収穫を感謝するとともに、十五夜のまるい月に託して、円満、幸福、平和を願い、一家団欒を楽しむ「中秋節」。家庭でも、欠けのない丸い食器で食事をし、秋の実りを供えます。そして、日本の「十五夜」の定番菓子である団子の代わりに登場するのが「月餅」です。一人で1個ずつ食べるのではなく、家族や親友と切り分けて食べることで、円満な関係が続くように願うのが慣わし。お世話になった方にプレゼントして、親愛や尊敬の情を示すこともある、格式高いお菓子です。

月餅の由来には諸説あり、たとえば、中秋の頃には昼と夜の長さは同じになるため、月を太陽と同等に敬うべき対象と考えた人々が、その形を模した菓子をつくったという天文学的な説のほか、元を倒した明の皇帝・朱元璋が、月餅の中に密書を隠して伝令の者に持たせ、そのおかげで勝利したというユニークな逸話も残っています。今でこそ、機械で大量生産されるようになりましたが、昔は模様を彫り込んだ木型の生地を入れ、飴を包み込むように成型してから、表面が硬く茶色に色づくまで焼く「広州式」で手づくりする店が多かったようです。

形は真ん丸と決まっているわけではなく、店や家庭によって、楕円形や四角形のものもありますが、”角がとれていること”が必須条件。日本では、小豆飴を入れた「豆沙月餅(トウシャユエピン)」がおなじみですが、中国では、ハスの実の餅を入れた「蓮蓉月餅(リェンロンユエピン)」や、干しあわびやハムなどを使った甘くない月餅など、味のバリエーションも豊富。お祝い用に、おやつに、そして軽食にとして、いつでも誰にでも愛される食べ物が月餅です。

南京町の中秋節でも、第12回目となる2009年からオリジナルの「南京町月餅」を販売しています。また獅子舞や龍舞、太極拳、中国音楽、中国舞踏などは、いまや恒例のイベントとなりました。さらに2001年からは、夜行龍の「焔龍(イェンロン)」も加わり、蛍光塗料とブラックライトによる妖しいい光で、訪れる方を魅了します。

日本にも地域ごとに神輿やだんじりなどの祭礼団が存在するように、中国の青年たちも村ごとに「龍獅団」を結成し、祭事のときに獅子舞や龍舞を披露します。神戸南京町龍獅団のメンバーも、学校や仕事が終わった夕方から広場に集まり、週1~3回のペースで練習に励んでいます。間近で観れば、体操競技にも劣らないハードなアクションと、チーム全員の息のあった競技、オス龍の勇壮な踊りとメス龍の艶やかな踊りのコントラスト、音楽の強弱を捉えて表情を変える獅子の豊かな表現力に驚かされるはず!

そのほか、巨大ガラポンで運試しができる「福球」や「子供餅つき大会」、「チャイナドレス写真館」、「西遊記の主人公たちと会える撮影会」など、毎年趣向を凝らした出し物を企画。美しい月が顔を出すまで、たっぷり楽しめる秋のイベントです。



11月11日は「豚饅の日」   KOBE豚饅サミットが開催されています。

豚饅発祥の地、神戸・南京町。

平成27年には豚饅発祥100周年を迎えました。

中 国の天津には古くから「天津包子(てんちんぱおつ)」という饅頭があり、おやつや朝食など家庭で食べられていました。老祥記の創業者、曹松琪は、子どもの 頃から親しんでいた天津包子をベースに、日本人好みの醤油を効かせた中華饅頭を作り、大正4年(1915)に神戸・南京町で売り出しました。その際、この 饅頭を「豚饅頭」とよびましたが、これが「ぶたまん」の始まりです。

その「老祥記」の三代目当主・曹英正さんと、豚饅・中華の老舗・有名店の「四興楼」葉長青さん、同じく「三宮一貫楼」の安藤孝志さんが発起人になって、2011年よりスタートしたのが「KOBE豚饅サミット」です。

 


龍舞

中国では「神様の使者」、「皇帝の紋章」として考えられていた龍は、庶民にとって、決して身近な存在ではありませんでした。

現在では中国本土はもとより、世界のチャイナタウンで龍が舞い、春節など季節の節目を祝います。南京町の龍にはオス龍(ロンロン)とメス龍(メイロン)が設定されています。これは南京町だけのオリジナルなのです。

中国古来の風水思想にのっとり、幸せや福を引き寄せる玉に導かれて舞うロンロン。勇壮に舞い進み、観ている皆さんにも、幸せなパワーを運んでくれることでしょう。

頭部だけで約20キロあるロンロンを操り、軽やかに舞うのは見た目以上に重労働。しかし、春節祭や中秋節で龍舞を見て一目ぼれした人たちが、”舞い手”を志願し、仲間に加わる例も増えています。


獅子舞

中国の獅子舞には、日本の獅子舞の原型となっている「北方獅子」と、南京町で舞っている「南方獅子」があります。招福や厄除けの象徴として、祭事には欠かせない存在です。「南方獅子」には、動きが滑らかな仏山式と世界大会が開かれている鶴山式という2つのスタイルがあります。南京町がお手本にしているのは鶴山式になります。外見は面長で、愛嬌のある顔立ちが特徴のひとつです。

獅子には様々なサイズがあり、南京町では3号~4号を使っています。頭役と脚役の2人1組でアクロバッティックな動きを見せますが、頭役が軽やかにジャンプを決めるとき、脚役は前が見えない状態で頭役を支えるなど、息の合った演技は圧巻。ドラや太鼓に合わせたリズミカルな動きは、日頃の練習の賜物です。


旧居留地